整形外科医oceanaidのブログ

中堅整形外科医の視点でいろいろ書いていきます。

スポンサーリンク

肩こりや肩の痛みの原因となる「五十肩」について整形外科医が解説してみました

こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。

 

今回は肩こりや肩の痛みの原因となる「五十肩」についてお話していきたいと思います。

 

肩こりについてはこちら

腕の痛みについてはこちら

 

五十肩とは?

かつては、50歳くらいに好発する肩の痛みと可動域制限(肩関節の動きの悪さ)を主訴とする肩関節疾患を総称して五十肩と呼んでいました。

 

しかしこの中には、腱板断裂や石灰性腱炎などの明確な診断がつく疾患が含まれていたことが判明し、

今日では、これらの疾患を除外し、明確な病態診断ができないものを五十肩と呼んでいます。

 

別名、肩関節周囲炎癒着性関節包炎とも呼ばれ、40代に発症する場合は四十肩とも呼んだりします。

 

f:id:oceanaid:20190725121707j:plain

五十肩の症状は?

肩の痛み可動域制限が主症状です。

 

典型的な経過としては、

凍結進行期(freezing phase)、凍結期(frozen phase)、解凍期(thawing phase)と呼ばれる、

3つの時期をそれぞれ4ヵ月程度ずつ経て、1年くらいの経過で治癒します。

 

 1. 凍結進行期(freezing phase)

特に明らかな原因がないことが多いですが、動作時痛(肩を動かしたときに痛む)が出現します。

 痛みによって肩の動きが制限されていきます。

 痛みが強くなってくると、安静時痛(じっとしていても痛む)、夜間痛(寝ているときに痛む)が出現し、徐々に拘縮(肩関節が固まってしまう)が進行します。

 

 2. 凍結期(frozen phase)

拘縮が完成し肩の動きはあらゆる方向に制限されます。

特に、衣服の着脱、洗髪、結帯動作(エプロンやブラジャーなどを後ろで装着する動作)などの日常生活動作に支障がでます。

 その一方で、痛みはむしろ軽減していきます。

 

 3. 解凍期(thawing phase)

 拘縮が徐々に改善していき、肩の可動域が元に戻ります。

また、痛みも消失します。

 

五十肩の診断は?

特徴的な検査所見や診察所見はありません。

レントゲンやMRI によって、肩の痛みを起こす疾患を除外することで診断に至ります。

 

五十肩の治療は?

保存療法が原則です。

 

その内容としては、痛みが強い時期は、

三角巾やアームスリングを使った局所の安静や鎮痛剤の内服などを行います。

ヒアルロン酸の関節内注射なども行うことがあります。

痛みが増強しない範囲でのリハビリテーションを行います。

 

痛みが軽減し、肩の可動域制限が主体となった時期には、

日常生活で積極的に痛い方の腕を使うように指導し、

かつ、本格的にリハビリテーションを行うことで可動域の再獲得を目指します。

f:id:oceanaid:20190725114910j:plain

 

保存療法で改善ない場合は、

全身麻酔下での関節鏡視下肩関節受動術(固く、分厚くなった関節包を切離すること関節包をひろげる手術)や、

 

サイレント・マニピュレーション(神経ブロック注射にて痛みを取った状態で、術者が徒手で関節包を破断する方法、日帰りでの処置が可能)などを行うこともあります。

 

以上、今回は「五十肩」についてのお話でした。