肩の痛みの原因となる「石灰性腱炎」について整形外科医が解説してみました
こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。
今回は肩の痛みの原因となる「石灰性腱炎」についてお話していきたいと思います。
腕の痛みについてはこちら
石灰性腱炎とは?
肩関節には腱板 というインナーマッスルが存在しますが、
この腱板内に石灰が沈着することにより炎症を起こす疾患です。
出典:日本整形外科学会(一部改変)
原因の詳細は不明ですが、
腱板の変性(加齢性変化)や軟骨化生(軟骨に置き換わる)が起こることで石灰が沈着すると言われています。
この石灰の成分は炭酸アパタイトなどのリン酸カルシウムで白色ペースト状です。
誰に多い?
40~50歳台に多く、やや女性に多いです。
症状は?
沈着した石灰が吸収される過程で炎症反応が生じ、
その炎症反応のため、激烈な肩関節痛が生じます。
その痛みは痛風に匹敵するとも言われ、
痛みによって肩を全く動かすことができなくなります。
その他、夜間痛や患部の腫れ・熱感などを伴うこともあります。
診断は?
レントゲンにて石灰沈着が確認できます。
出典:日本整形外科学会
その他、腱板の状態を評価するためにMRI検査を行うこともあります。
治療は?
症状が強い急性には、
注射針によって石灰を吸引し、副腎皮質ステロイド薬を注入します。
炎症の元となる石灰を除去することで炎症の持続を防ぎ、
さらに副腎皮質ステロイド薬にて炎症を強く抑えることで痛みが軽減します。
石灰が粉末状となって吸引できないこともあるため、
その場合は、石灰に注射針を複数回刺すことで石灰の自然吸収を促進します。
また、消炎鎮痛剤の服用やシメチジンという胃薬(石灰の吸収を促進させる作用がある)を服用してもらいます。
慢性期になると、
沈着した石灰のために腱板が肥厚し、肩峰(腱板の上にある骨)と衝突現象を起こすため腕を上げた際の痛みが出現することもあります。
その場合は、関節鏡を用いた石灰摘出術や肩峰下除圧術などを行うこともあります。
以上、今回は「石灰性腱炎」についてのお話でした。
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