整形外科医oceanaidのブログ

中堅整形外科医の視点でいろいろ書いていきます。

スポンサーリンク

肩の痛みの原因となる「腱板断裂」について整形外科医が解説してみました

こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。

今回は肩の痛みの原因となる「腱板断裂」についてお話していきたいと思います。

 

腕の痛みについてはこちら

スポンサーリンク  

 

 

腱板断裂とは?

肩関節にはインナーマッスルの棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つが存在し、

4つあわせて腱板と呼ばれています。

そして、これらの筋肉は腱性部分を経て上腕骨に付着しています。

 

腱板は腕を動かす際に重要な筋肉群ですが、

腱板の腱性部分が断裂し、連続性が断たれた状態を腱板断裂と呼びます。

4つの筋肉のうち、棘上筋が最も断裂しやすいです。

f:id:oceanaid:20191114150808j:plain

 

断裂の原因としては以下が挙げられます。

  • 加齢による腱の変性
  • 腱板収縮による腱性部分への力の集中
  • 肩峰(腱板の上にある骨;肩甲骨の一部)との衝突
  • 外傷
 

誰に多い?

中年以降に多いです。

 

40歳代以下が5%、50歳代が15%、60歳代が25%、70歳代が45%、80歳代が
50%程度と、年齢とともに腱板断裂の頻度が上昇していきます。

 

ただし腱板断裂があっても症状がないことが多く、

腱板断裂の2/3程度は無症状と言われています。

スポンサーリンク  

 

症状は?

動作時痛、安静時痛、夜間痛を認めることが多いです。

 

夜間痛とは就寝時に痛みが出現することで肩関節疾患に特徴的な症状ですが、

その原因として、

就寝後に肩に意識が向くこと、就寝時は皮膚温が下がり痛みに敏感になることなどが関連していると言われています。

 

また腱板が断裂すると筋力低下も引き起こし、

断裂部位によって腕を前から上げにくくなったり、横から上げにくくなったり、腕を捻じりにくくなったりします。

(棘上筋腱断裂で外転筋力低下、棘下筋腱断裂で外旋筋力低下、肩甲下筋腱断裂で内旋筋力低下)

 

診断は?

さまざまな診察法が開発されており、診察にて断裂部位が推測可能なことが多いです。

 

画像検査としては、超音波やMRI検査が有用です。

f:id:oceanaid:20191114154316j:plain

スポンサーリンク  

 

治療は?

断裂部が自然につながることはありませんが、

中高年の場合は基本的にまずは保存療法を選択することが多いです。

 

保存療法としては、

消炎鎮痛剤の内服や副腎皮質ステロイド注射、ヒアルロン酸注射、理学療法(温熱療法、ストレッチ、関節可動域訓練、筋力強化訓練など)などが行われます。

f:id:oceanaid:20191114194825j:plain

 

3~6か月間程度継続することで、約7割の方は痛みや筋力低下が軽減し、日常生活に支障がなくなります。

 

若年者の外傷やスポーツによる断裂、保存療法に抵抗する残りの3割の方などには手術療法を選択します。

 

手術療法としては、鏡視下腱板修復術が最もよく行われています。

関節鏡を用いた低侵襲な手術方法です。

骨にアンカーを打ち込み、アンカーから出ている縫合糸を用いて断裂部を縫合します。

断裂の大きさに依存するところもありますが、概ね1~2時間の手術時間です。

f:id:oceanaid:20191114194839j:plain

 

極めて良好な手術成績が報告されていますが、

術後の再断裂が問題となることがあります。

再断裂率に関しては、術前の断裂サイズに依存するところも大きく、

断裂サイズが大きければ大きいほど、再断裂率も高まります。

 

ただし再断裂したとしても、

術前の状態に逆戻りになることはほとんどなく、

再断裂しても術前よりははるかに改善することが多いです。

 

 また、原則70歳以上の高齢者に限りますが、

鏡視下腱板修復術が困難な広範囲の腱板断裂などで、腕を上げることができない(偽性麻痺肩)場合は、リバース型人工肩関節全置換術が適応となることもあります。

 

ヨーロッパでは20年以上前から行われていた手術方法ですが、

日本では2014年4月から使用開始となりました。

 

痛みをとる、腕をあげれるようになるという点に関しては素晴らしい手術方法で日本全国に広まっています。

 

以上、今回は「腱板断裂」についてのお話でした。

スポンサーリンク