整形外科医oceanaidのブログ

中堅整形外科医の視点でいろいろ書いていきます。

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腰痛や脚の痛みの原因となる「腰部脊柱管狭窄症」について整形外科医が解説してみました

こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。

今回は腰痛、脚の痛みの原因となる「腰部脊柱管狭窄症」についてお話していきたいと思います。

腰痛についてはこちら

脚の痛みについてはこちら

 

 

腰部脊柱管狭窄症とは?

背骨(脊椎)の中には脊髄という神経が通っており、その通り道を脊柱管と呼びます。

 

また、腰の部分の脊椎を特に腰椎と呼びますが、通常5個縦に積み重なっています。

 

この腰椎の上から2番目(第2腰椎)あたりで脊髄は馬の尾のような形状となり、これを馬尾と呼びます。

 

馬尾は、それぞれの腰椎で左右一対ずつ枝分かれして脚に巡っていますが、この枝分かれしたものを神経根と呼びます。

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腰部脊柱管狭窄症とは、

脊柱管が狭くなることで、馬尾や神経根を圧迫し、

さまざまな症状が出現する疾患です。

 

誰に起こりやすい?

先天性の場合は軟骨無形成症という疾患の方に起こることが有名です。

軟骨無形成症は出生2万人あたりに1人発症します。

 

後天性の場合がほとんどで、変形性腰椎症(加齢性の骨の変形)による脊柱管狭窄症は男性に、腰椎変性すべり症によるものは女性に多いです。

 

症状は?

神経の圧迫によって脚の痛みしびれ、異常感覚が出現します。

 

通常、重度の腰痛が出現することは少なく、安静時には症状は軽度あるいは無症状です。

 

一方、歩行を続けると脚の痛み、しびれが増強して歩行継続が困難となりますが、

すこし前かがみになったり、腰かけたりすると症状が軽減します。

これを、間欠跛行と呼び、腰部脊柱管狭窄症に特徴的な症状です。

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また、症状が進行すると、

安静時でも脚の痛みやしびれが強くなり、下肢の脱力が出現します。

 

さらに、膀胱直腸障害(排尿や排便の障害)が認められる場合もあります。

 

診断は?

間欠跛行があれば本症を強く疑います。

 

MRIが極めて有用で、脊柱管の狭窄神経の圧迫所見などを確認することができます。

 

治療は?

脚の痛み(神経根の圧迫症状)が主の場合は自然に軽快することが期待できますが、

しびれ、異常感覚、膀胱直腸障害(馬尾の圧迫症状)が主の場合は自然に軽快することは期待できません。

 

保存療法としては、

内服治療(消炎鎮痛剤の内服や、神経への血流障害改善目的にプロスタグランジンE1製剤の内服など)や神経ブロック注射を行います。

 

手術療法としては、

  1. 保存治療無効例
  2. 強い痛みのため歩行が制限されている例
  3. 膀胱直腸障害のある例
  4. 間欠跛行のため極端に日常生活が制限される例

などを対象として、

 

後方除圧術(骨、靭帯、椎間板などの神経圧迫因子を切除することで神経の圧迫を解除する)が主に行われます。

 

また、除圧術に加えて、

原因疾患(腰椎すべり症による不安定性がある場合など)の状態に応じて固定術(主に特殊な金属を用いて骨を固定します)が併用されます。

 

以上、今回は「腰部脊柱管狭窄症」についてのお話でした。