股の痛みの原因となる「変形性股関節症」について整形外科医が解説してみました
こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。
今回は股の痛みの原因となる「変形性股関節症」についてお話していきたいと思います。
脚の痛みについてはこちら
変形性股関節症とは?
関節軟骨の変性や摩耗により関節の破壊が生じ、これに対する反応性の骨増殖(骨硬化、骨棘形成)を特徴とする疾患です。
出典:日本整形外科学会
原疾患が明らかでない一次性股関節症と、何らかの疾患に続発する二次性股関節症に分類されます。
わが国では、一次性は15%程度と少なく、二次性が80%程度を占めています。
二次性股関節症の原疾患としては様々な疾患がありますが、
その多くは、発育性股関節形成不全と言われています。
ちなみに発育性股関節形成不全とは、
生まれたときにすでに股関節が脱臼している状態、
臼蓋形成不全(股関節の骨盤側の低形成)や関節弛緩(もともと関節が緩い状態)の状態、
生まれた後の抱き方やおむつの種類・巻き方などの後天的な要素による股関節の不安定状態、亜脱臼、脱臼準備状態など、
すべてを含めた幅広い疾患概念です。
誰に起こりやすい?
わが国の変形性股関節症患者の頻度は、
男性0~2%、女性2~7.5%と女性に多くなっています。
人種で言うと、日本人より欧米人の方が頻度が高いです。
症状は?
①.痛み
股関節痛が主体となりますが、太ももやお尻、腰にも痛みを感じることがあります。
初期では、長距離歩行後のだるさや動き始めの痛みが出現しやすく、進行するにつれて安静時痛や夜間痛(就寝時痛)が出現します。
②.可動域制限(股関節の動きの制限)
初期には可動域制限は軽度ですが、進行するにつれて制限が強くなっていきます。
通常、末期になったとしても股関節が全く動かなくなることはありません。
③.異常歩行
疼痛回避歩行(痛みのため地面に足が接地する時間が短くなる)、
硬性墜下性歩行(変形のため脚が短くなり、骨盤が傾く歩き方)、
軟性墜下性歩行(股関節周囲の筋力低下によって骨盤が傾く歩き方)などが出現します。
診断は?
レントゲンを撮影することで診断が確定できます。
変形性股関節症には病期(ステージ)が存在し、その病期応じたレントゲンの所見があります。
①.前股関節症
レントゲンではほとんど所見はありませんが、一部関節面の不適合を認めることがあります。
②.初期股関節症
部分的に関節の隙間が狭くなります。このときはまだ骨同士の接触はありません。
また、関節面の不適合を認めます。
③.進行期股関節症
さらに関節の隙間が狭くなり、部分的には骨同士の接触を認めます。
体重がかかる部位(荷重面)では関節の隙間が消失することもあります。
また、関節面の不適合も進行します。
④.末期股関節症
関節の隙間がほぼ消失し、骨同士が接触します。
関節面は高度の不適合が存在します。
治療は?
保存療法と手術療法があります。
- 保存療法
痛みが強くない場合や、種々の理由で手術ができない場合は保存療法が選択されます。
その内容としては、
- 手術療法
病期によって手術方法が変わってきます。
初期股関節症(条件が良ければ進行期の一部も)であれば、
寛骨臼回転骨切り術(RAO)などの骨切り術が行われます。
これは、骨盤側の骨をドーム状に切り、
切った骨を回転させることで股関節の適合性を改善させる手術方法です。
この手術によって、病期の進行を防ぐことができます。
末期股関節症に対しては、
人工股関節置換術(THA)が行われます。
これは、その名の通り骨盤側と大腿骨側の股関節を全て人工物に置き換える手術方法です。
優れた除痛効果があり、可動域の改善も期待できます。
また、脚の長さに左右差がある場合はその補正も可能となります。
以上、今回は「変形性股関節症」についてのお話でした。