整形外科医oceanaidのブログ

中堅整形外科医の視点でいろいろ書いていきます。

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腰痛の原因となる「腰椎すべり症」について整形外科医が解説してみました

こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。

今回は腰痛の原因となる「腰椎すべり症」についてお話していきたいと思います。

腰痛についてはこちら

 

 

腰椎すべり症とは?

縦に積み重なっている腰骨(腰椎)が、一つ下の腰骨に対して前方にずれている状態の総称です。

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原因は?

  1. 先天的な形成異常によるもの(先天性脊椎すべり症
  2. 脊椎分離症にともなうもの(腰椎分離すべり症
  3. 変性(加齢)によるもの(腰椎変性すべり症
  4. 骨折などの外傷によるもの
  5. 癌や細菌感染などによる骨破壊によるもの
 
などがありますが、特に1~3が重要です。
 

先天性脊椎すべり症とは?

先天的に関節突起という脊椎同士のつなつなぎめに形成不全があり、

きわめて高度なすべり症が生じます。

 

成長とともに進行し、思春期に急激に悪化することもあります。

 

先天性脊椎すべり症の症状は?

腰痛とふとももの裏の痛みを訴えます。

腰椎の変形を代償するために、見かけ上お尻を突き出したような姿勢をとります。

 

すべりが強い場合は神経を圧迫し、脚の痛みやしびれが出現することもあります。

 

 先天性脊椎すべり症の診断は?

レントゲンやCTにて椎体が前方にすべっているのを確認できます。

 

先天性脊椎すべり症の治療は?

背骨を固定する、脊椎固定術という手術が必要です。

神経圧迫の症状もあれば、除圧術も追加します。

 

 

腰椎分離症・腰椎分離すべり症とは?

まず、腰椎分離症とは、

関節突起という脊椎同士のつなぎめの部分の連続性が断たれた状態です。

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 大半が、青少年の過度のスポーツが原因と考えられており、青少年の腰痛の原因疾患の1つと考えられます。

 

第5腰椎に発症しやすく、過度なスポーツによる疲労骨折と考えられています。

 

その分離部から生じた椎体のすべった状態を腰椎分離すべり症と呼びます。

 

腰椎分離症・腰椎分離すべり症の症状は?

腰痛、腰を曲げた時に生じる、ずれるような不安感など。

しばしばふとももの裏に重だるいような痛みを感じることもあります。

 

神経を圧迫する場合、片脚または両脚の痛みも伴います。

 

腰椎分離症・腰椎分離すべり症の診断は?

分離症の場合、レントゲンで45°斜位像という特殊な撮影をすると分離部が確認できることがあります。

初期の場合レントゲンでは分離部がはっきりしないこともありますが、MRIでは確認することができます。

 

分離すべり症になると、レントゲンやCTにて椎体が前方にすべっているのを確認できます。

 

腰椎分離症・腰椎分離すべり症の治療は?

青少年の腰椎分離症は発症して間もなくであれば保存治療にて治癒が期待できます。

 

治療の内容は、スポーツを少なくとも半年程度完全に中止し、

硬性コルセット(オーダーメイドのしっかりとしたコルセットです)を3か月程度装着します。

 

急性期を過ぎ、分離が完成してしまった場合、

腰痛が強い場合はスポーツを一時中止し、症状が軽減後スポーツを再開します。

 

しかし、症状次第では必ずしもスポーツを禁止する必要はありません。

また、分離があるからといって必ずしも痛みが出現するわけでもありません。

 

分離すべり症に至った場合でも、原則は保存治療を選択します。

 

その内容は、腰に負担がかかる作業を避ける、スポーツを一時中止するなどですが、

痛みに応じて、コルセットを装着します。

 

また、必要に応じて鎮痛剤を内服したり、ブロック注射をしたりします。

 

保存療法でも改善せず、仕事に支障がある場合や今後もスポーツを継続する希望がある場合、手術療法が選択されます。

 

手術は脊椎固定術を行いますが、神経の障害もある場合は除圧術も行うのが一般的です。

 

 

腰椎変性すべり症とは?

腰椎の分離なしに、椎体が前方にすべっている状態です。

 

40歳以上女性に多く、

椎間板を中心とした脊椎の退行性変性(組織の形が変化して、その働きが低下すること、加齢や繰り返し動作による疲労が関係)によって支持性が失われ、発症します。

 

第4腰椎に多いです。

 

腰椎変性すべり症の症状は?

徐々に発生する腰痛のことが多いです。

 

神経の通り道が狭くなり、神経を圧迫する(脊柱管狭窄)と脚の痛みやしびれも出現します。

 

腰椎変性すべり症の診断は?

レントゲンにて椎体が前方にすべっているのが確認できます。

 

また、椎体と椎体の間の椎間板腔が狭くなってきます。

 

MRIでは神経の圧迫の有無が確認できます。

 

腰椎変性すべり症の治療は?

腰痛が主の場合は保存療法として、

コルセットを装着したり、運動療法を行います。

症状に応じて鎮痛剤も併用します。

 

神経の圧迫(脊柱管狭窄)による症状が高度である場合や、脊椎の不安定性が高度である場合は、

手術療法(脊椎固定術や除圧術など)が選択されます。

 

以上、今回は「腰椎すべり症」についてのお話でした。