整形外科医oceanaidのブログ

中堅整形外科医の視点でいろいろ書いていきます。

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手の痛みの原因となる「手根管症候群」について整形外科医が解説してみました

こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。

今回は手の痛みの原因となる「手根管症候群」についてお話していきたいと思います。

 

腕の痛みについてはこちら

 

手根管症候群とは?

手根管とは手根骨と屈筋支帯で構成されるトンネルのことですが、

この中には、指を曲げる腱(屈筋腱)と正中神経が走っています。

 

この手根管内で何らかの要因により手根管内圧が高まると、

正中神経が絞扼され(圧迫され)しびれ、痛みなどが出現します。

 

最も頻度が高い絞扼性神経障害と言われています。

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誰に多い?

女性に多く発症し、特に妊娠期閉経期に多いです。

 

その他、長期透析患者や手首周辺の骨折後の方、手をよく使う仕事の方にも発症することがあります。

 

症状は?

初期には、

人差し指、中指にしびれ、痛みが出現します。

また、痛みは手を振ることで軽減します。(flick sign

 

進行すると、

親指から薬指の親指側半分(正中神経の支配領域)がしびれます。

特に急性期には、しびれ、痛みは明け方に強く、目を覚ますと手がしびれて痛みます。

 

さらに進行すると、

指先の感覚が鈍くなったり、親指の付け根の筋肉(母指球筋)が萎縮してきます。

萎縮が高度になると、つまむ動作が不自由になります。

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診断は? 

手首を打腱器などでたたくと痛みが指先に響きます。

これをティネル様サイン陽性といいます。

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 また、手首を直角に曲げて手の甲同士をあわせて1分間保持すると、

しびれ、痛みが悪化する場合(ファレンテスト陽性)も手根管症候群を強く疑います。

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そして、

電気生理学検査にて、正中神経に終末潜時の遅延や神経伝導速度の低下がないかを確認することで診断を確定します。

 

治療は?

軽症あるいは中等症であれば保存療法を選択します。

手首の安静を保つことで症状軽減が期待できるため、サポーターを装着したりシーネ固定(添え木)したりします。

 

痛みが強い場合はステロイド注射が有効ですが、高頻度で症状の再発を来すため安易に注射を繰り返すことは勧められません。

 

保存療法の効果がない場合や、母指球筋の萎縮が進行している場合などは手術療法が選択されます。

 

手術療法としては手根管開放術がよく行われています。

手根管狭窄の原因となっている横手根靭帯(屈筋支帯)を切り開き神経の圧迫を解除する手術です。

 

皮膚を切開し直視下に行うことが多いですが、

施設によっては内視鏡を用いた小切開での手術を行うところもあります。

 

また、正中神経圧迫の要因がガングリオンや滑膜炎などであればその原因部位を切除することもあります。

 

以上、今回は「手根管症候群」についてのお話でした。