整形外科医oceanaidのブログ

中堅整形外科医の視点でいろいろ書いていきます。

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股の痛みの原因となる「特発性大腿骨頭壊死症」について整形外科医が解説してみました

こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。

今回は股の痛みの原因となる「特発性大腿骨頭壊死」についてお話していきたいと思います。

 

脚の痛みについてはこちら

 

特発性大腿骨頭壊死症とは?

非外傷性に大腿骨頭の無菌性、阻血性壊死をきたし、

大腿骨頭の圧潰変形が生じ、その結果二次性の変形性股関節症に至る疾患です。

 

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大腿骨頭は全面を軟骨に覆われており血流が比較的少ない部位ですが、

その部位に血流障害が起きると栄養分や酸素が供給されず、骨の壊死を引き起こしてしまいます。

 

壊死した部分は脆くなっているため、荷重がかかると陥没してしまい痛みが出現します。

 

発症には副腎皮質ステロイドの投与歴アルコール多飲歴が深く関与していると言われています。

 

誰に多い?

青壮年に発生しやすいです。

 

ステロイド性は20歳台に多く、アルコール性は40歳台に多いです

 

男女比は2~3:1で男性に多いです。

 

特にアルコール性は男性に多く、日本酒を1日に3合以上で15年間以上飲酒歴があればアルコール性とされます。

 

症状は?

階段を踏み外したり、股を捻ったりして比較的急に股関節痛が出現します。

この点は、慢性的に痛みが増悪していく変形性股関節症と異なってきます。

 

骨頭が壊死していても、陥没がなければ痛みを感じることはありませんが、

壊死部にストレスがかかって陥没が生じると急に痛みが出現します。

 

しかし、この痛みは2~3週間で落ち着くことが多く、

その他膝関節痛や臀部痛、股関節可動域制限などによって本症が発見されることもあります。

 

診断は?

骨頭壊死は早期だとレントゲンで確認することができないため、MRI検査を行います。

MRIでは黒い帯状の像を認め、骨頭壊死に特徴的な所見です。

 

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治療は?

壊死部は荷重かかからなければ2~3年で修復され、正常の骨組織の戻りますが、

日常生活で壊死部に荷重をかけないようにすることは難しいです。

 

壊死の範囲が狭い場合は、杖や松葉杖などを使用し荷重を制限しながら保存的に経過を診ることもありますが、

壊死の範囲が広いと、ほとんどが壊死部の陥没をきたすため手術が必要となってしまいます。

 

手術には、

骨頭を温存する方法として大腿骨内反骨切り術大腿骨頭回転骨切り術などがあります。

 

荷重面に壊死部が存在すると骨頭の陥没につながりますので、

荷重面に正常部位を持ってくるように骨頭の位置を調整することで、陥没進行を抑えるという手術方法です。

 

また、壊死の範囲が広くなると荷重面に正常部位を持ってくることが難しくなるため、

人工股関節置換術人工骨頭置換術などの人工物に置き換える手術を選択します。

 

以上、今回は「特発性大腿骨頭壊死」ついてのお話でした。