整形外科医oceanaidのブログ

中堅整形外科医の視点でいろいろ書いていきます。

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手首の痛みの原因となる「キーンベック病」について整形外科医が解説してみました

こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。

今回は手首の痛みの原因となる「キーンベック病」についてお話していきたいと思います。

 

腕の痛みについてはこちら

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キーンベック病とは?

手首には手根骨と呼ばれる付け根の骨が8個存在します。

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そのうち真ん中にある月状骨への血流が途絶し、

骨が壊死することで痛みが出現する疾患です。

 

進行すると、月状骨は潰れてしまい、やがては手首全体の変形につながります。

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発症機序は不明ですが、

月状骨骨折、繰り返す小外傷、橈骨が尺骨より長いことによる月状骨への過剰な負荷などが原因と考えられています。

 

誰に多い?

手をよく使う職業(大工など)やスポーツ選手に多いです。

 

特に10歳代後半から30歳代の男性利き手に多いです。

 

手を使う労働者の調査では10万人あたり3000~4500人程度に発症し、

男女比は4:1と言われています。

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症状は?

手首の痛み、月状骨(手首の中央部)を押さえた時の痛み、軽い腫れなどが主です。

 

発症初期では、

起床時の手首のこわばりや、手を使った後の疲労感が出現し、

 

進行すると、

手首の運動時痛や可動域制限が出現します。

 

さらに進行すると、

手首の安静時痛、夜間痛、握力低下なども出現してきます。

 

診断は?

レントゲンにて、月状骨の硬化像(白っぽくうつる)や圧潰像(潰れる)を確認します。

 

発症初期の場合は、レントゲンでは異常を認めないこともあるため、

その場合はMRIが有用です。

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治療は?

レントゲンによる病期(ステージ)分類に応じて治療を行います。

 

StageⅠ

手首の痛み、違和感、可動域制限を認めるが、レントゲンでは月状骨の線状骨折を認める程度か、異常を認めない。

 

StageⅡ

レントゲンで骨硬化像(白っぽくうつる)を認める。形態変化はなし。

 

StageⅢ

月状骨の圧潰が著明で、有頭骨の位置の変化が生じる。

 

StageⅣ

手関節全体の関節症変化を認める。

 

 

 

StageⅠの場合は、ギプス固定や装具療法を行います。

手をよく使う職業の方で、数か月たっても改善しない場合や、

病期が進行している場合は手術療法を選択します。

 

ただし、高齢者であまり手を使う必要がない方などは病期が進行していたとしても手術を行わないこともあります。

 

手術療法には、病期に応じて以下の術式があります。

月状骨への負荷を減少させる術式

  • 橈骨短縮骨切り術
  • 橈骨楔状骨切り術
  • 部分手関節固定術
血行再建術
  • 血管束移植術
  • 血管柄付き骨移植術
月状骨摘出術+代替物置換術
近位手根列切除術
手関節固定術

 

主に、

StageⅡ~Ⅲに対しては単独やを併用した術式を、

進行したStageⅢやⅣに対してはの術式を、

高度に手関節の関節症変化を認める場合はの術式を選択します。

 

以上、今回は「キーンベック病」についてのお話でした。

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