整形外科医oceanaidのブログ

中堅整形外科医の視点でいろいろ書いていきます。

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腰痛の原因となる「筋・筋膜性腰痛」について整形外科医が解説してみました

こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。

 

今回は腰痛の原因となる「筋・筋膜性腰痛」についてお話していきたいと思います。

 

腰痛についてはこちら

 

 

筋・筋膜性腰痛とは?

腰部背筋群やその筋膜によっておこる腰痛のことです。

 

非特異的腰痛の一種で、腰痛の原因として最も多いと言われています。

 

脊椎に周囲には、脊柱起立筋(最長筋、腸肋筋)、その深層にある多裂筋、横突間筋、腰方形筋、そしてさらに深層には脊椎に接するように大腰筋があります。

 

また、脊椎からは離れていますが、腹筋群として腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋があります。

 

これらの筋肉によって脊椎が支えられ、体幹の運動に関与しています。

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また、筋肉を区画し筋肉の収縮力を腱に伝え、

各々の筋肉同士や周囲の組織との滑走性を保って独立した運動が行えるようにするために結合組織(fascia)と呼ばれる組織があります。

 

その結合組織(fascia)として、

筋肉の周囲を覆う筋周囲筋膜(muscle-related layer)や、

皮膚の下に膜状に薄く広く分布する皮下結合組織(superficial fascia)、

より厚く全身に連結し筋組織の張力を伝達するdeep fasciaというものがあります。

 

 

筋肉に強い衝撃や大きな負荷などがかかると局所的に損傷を起こし、炎症や不活動が生じます。

すると、筋肉は萎縮し、結合組織周囲は硬く柔軟性を失い(線維化)、運動機能の低下を招きます。

 

このような結合組織の線維化が腰痛や肩こりの原因になると考えられます。

 

腰の場合、

浅層にある筋肉の表層を腰背筋膜、胸腰筋膜といった分厚い膜が覆っています。

 

これらの筋肉や、筋膜などの結合組織に炎症が起き、急性腰痛が発症します。

 

通常、多くの場合は障害を受けた組織がが治癒する3週間以内に腰痛も軽快しますが、筋肉の萎縮や、結合組織の線維化が起こってしまうと、慢性腰痛になってしまう場合もあります。

 

筋・筋膜性腰痛の診断は?

筋・筋膜性腰痛には特徴的な検査所見があるわけではありません。

 

十分な問診を行い、腰痛を誘発する姿勢や動作がないかを確認します。

(通常、安静時痛は少ないということも参考になります。)

 

その他、筋肉の緊張や萎縮の有無および左右差をみます。

触診にて筋肉に押さえた際の痛みや硬いしこりを認めることもあります。

 

必要時はレントゲン、CT、MRI検査などにてその他の腰痛を引き起こす疾患がないかを確認します。

 

筋・筋膜性腰痛の治療は?

発症したての急性期は、安静を心がけます。

ただし、安静は3日間以内にとどめ、筋力低下を防ぐためにも不必要な長期安静を避けます。

 

また、コルセット腰椎ベルトの装着は腰痛軽減に有効です。

 

 スポーツをしている方であれば、1週間程度スポーツを休んでもらい、腰痛の程度にあわせて軽い運動から再開します。

 

消炎鎮痛剤の内服や、湿布、塗り薬なども有効です。

 

そして何よりも重要なのが、リハビリテーションです。

 

ホットパックなどの温熱療法や、電気刺激療法、マッサージなどの物理療法に加え、

 

 ストレッチ、筋力強化訓練などの運動療法にて脊椎の可動性や安定性を獲得します。

 

筋膜の可動性を獲得するために筋膜リリースという手技も有効です。

筋膜リリースに関してはPTさん(理学療法士)がくわしいので、こちらでは割愛させて頂きます。

 

以上、今回は「筋・筋膜性腰痛」についてのお話でした。