整形外科医oceanaidのブログ

中堅整形外科医の視点でいろいろ書いていきます。

スポンサーリンク

肘の痛みの原因となる「テニス肘」について整形外科医が解説してみました

こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。

今回は肘の痛みの原因となる「テニス肘」についてお話していきたいと思います。

腕の痛みについてはこちら

 

テニス肘とは?

正式には上腕骨外側上顆炎といいます。

 

上腕骨外側上顆とは、肘の外側に骨の出っ張りを触れると思いますが、この部分です。

 

上腕骨外側上顆には手首を伸ばしたり、指を伸ばしたりする筋肉が付着していますが、これらの筋肉を使いすぎると、筋肉の付着部が傷んでいきます。

 

このため、手首や指を動かすと痛みが出現します。

 

テニスのバックハンドで発症することが多いため、「テニス肘」と呼ばれています。

 

誰に起こりやすい?

30 ~50歳代の中年女性に多いです。

 

テニス愛好家にも多いですが、手首や前腕をよく使う作業をする場合や、家事などの日常生活のなかで発症する場合も多くあります。

 

原因は?

スポーツや仕事で肘に負担がかかったり、日常生活で疲労が溜まって発症することが多いです。

 

中年以降の発症では、手首や指を伸ばす筋肉の付着部が加齢によって衰えていることも影響しています。

 

症状は?

手を使ったときに前腕の外側に痛みが生じます。

 

特に物をつかんで持ち上げたり、タオルを絞ったりするときに痛みが生じやすいです。

f:id:oceanaid:20190719124551j:plain

 

診断は?

痛みの部位を確認します。

 

また、疼痛誘発テストが有用です。

以下のテストで痛みが誘発されると陽性です。

 

 1.トムゼンテスト

検者は手首を曲げるようにして、患者さんには肘を伸ばしたまま検者の力に抵抗して手首を伸ばしてもらいます。 

f:id:oceanaid:20190719125441g:plain 

 

  2.チェアーテスト

患者さんに肘を伸ばしたまま手で椅子を持ち上げてもらいます。

 

 3.中指伸展テスト

検者が中指を上から押さえるのに抵抗して、患者さんに肘を伸ばしたまま中指を伸ばしてもらいます。

 

治療は? 

患部の安静が原則です。

 

テニス肘ベルトやサポーターが有用です。

 

その他、湿布や鎮痛剤も有効です。

 

痛みが軽減しない場合は患部へのステロイド注射が有効ですが、

注射後に痛みがなくなったからといって無理をすると再発しやすくなるので注意が必要です。

 

痛みが軽減してきたら、

ストレッチ(痛い方の肘を伸ばして、親指を下に向けるように内側にねじった状態で、痛くない方の手で痛い方の手首を手のひら側にゆっくり押す)と筋力訓練を開始します。

 

ほとんどの場合が上記の治療で改善しますが、

半年以上経過しても改善しない場合、Nirschl(ニルシュ)法と呼ばれる手術を行います。

 

この手術方法は、手首を伸ばしたり、指を伸ばしたりする筋肉の骨への付着部を一旦剥がし、傷んでいる部分を切除した後、骨へ縫い付ける方法です。

 

90%程度が改善を見込めます。

 

その他、最近は関節鏡を使って患部を切除する方法も行われています。

 

日常生活での注意点は?

重いものを持つときは患部に負担がかからないように、手のひらを上に向けて持ち上げるようにします。

 

タオルを絞ったり、ペットボトルの蓋を開けたり、掃除機をかけたりする際は、

親指、人差し指、中指を伸ばしたままにして、薬指と小指だけで握るようにすると患部への負担が軽減します。

 

また、痛い方の手でスマホを操作したり、ドアノブを操作したりしないようにします。

 

以上、今回は「テニス肘」についてのお話でした。