整形外科医oceanaidのブログ

中堅整形外科医の視点でいろいろ書いていきます。

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腕の痛みの原因となる「胸郭出口症候群」について整形外科医が解説してみました

こんにちは、中堅整形外科医oceanaidです。

今回は腕の痛みの原因となる「胸郭出口症候群」についてお話していきたいと思います。

 

腕の痛みについてはこちら

 

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胸郭出口症候群とは?

腕や肩周りの運動や感覚を司っている腕神経叢(脊髄神経から形成された神経の集まり)と鎖骨下動脈は、

前斜角筋と中斜角筋の間、②鎖骨と肋骨の間、③小胸筋の下層を走行しますが、

それぞれに部位で神経、血管が牽引・圧迫され症状が出現する疾患です。

 

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 それぞれの部位に応じて、

①斜角筋症候群、②肋鎖症候群、③小胸筋症候群と呼ばれますが、

これらをまとめて胸郭出口症候群と総称します。

 

牽引・圧迫を受けるのが、血管メインか、神経メインか、両方かによって、

血管圧迫型、神経牽引型、混合型の3つの病型があります。

 

誰に多い?

 

血管圧迫型の場合は、30歳台の男性に多く、筋肉質でいかり肩のことが多いです。

 

神経牽引型の場合は、20歳台の女性に多く、首が長くなで肩のことが多いです。 

 

症状は?

手指・腕のしびれ(特に小指側が多い)や熱感・冷感、脱力感、首・肩・胸・腕のうずくような痛み、だるさなどが生じます。

 

血管圧迫型の場合は、腕を上げると症状が増悪しやすく、

神経牽引型の場合は、腕を下すと症状が増悪しやすくなります。

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診断は?

症状と、病歴から推定可能です。

 

症状を誘発する以下のテストも有用です。

  • モーレイテスト

図の中の①の部位を圧迫すると腕や肩に痛みが放散する場合陽性です。

 

  • アドソンテスト
症状がある側の斜め後ろに頭を倒して、深呼吸をしてもらい、
手首の脈が弱まったり、消失すると陽性です。
 
  • ライトテスト
座った状態で肘を90度曲げ(90度屈曲)、脇を90度開き(90度外転)、さらに拳が上にくるように肩を捻る(90度外旋)姿勢をとって、手首の脈が弱まると陽性です。
 

治療は?

保存療法が中心です。

 

まずは、症状を悪化させる動作を避けるように指導します。

(血管圧迫型なら腕を上げた状態での作業を控えたり、神経牽引型なら腕の下げた状態での作業を控える) 

 

その他、肩すくめ運動(肩をすくめて5秒間程度保持し、肩をおろす)を行います。

 

症状に応じて、鎮痛剤を内服したり、ブロック注射を行ったりします。

 

基本的には手術療法は選択しませんが、

頑固な症状が持続するときは、斜角筋切除術や第1肋骨切除術などを行うこともあります。

 

 

以上、今回は「胸郭出口症候群」についてのお話でした。

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